『千一夜物語』で読み解く“美容”(4)

前回のつづきです。

大量の商品が入った籠を運び、荷かつぎ男は女性の家に招かれます。

ここで3人の女性たちと大宴会。そこに、3人の片目が見えない僧侶が訪ねてきます。
この3人は、それぞれの生い立ちを語るのですが、2番目の僧侶のお話のなかに、ハマムのシーンが登場します。

王子だった僧侶は、旅先で強盗に追われ、たどりついた町できこりの手伝いをします。
ある日、森の中で地下へつづく階段を見つけ、降りていくと、鬼神にとらわれた王女が住んでいました。
鬼神は10日おきにここにやってくるのですが、鬼のいぬまに、二人は甘いひと時を過ごします。

女性は男性の手を引いて、ハマムへ。
「弓形の入り口を通り、つきあたりに、快く柔らかい空気がたちこめた」浴室で、二人は一緒に入浴します。
その後、台に並んで座って休憩。

そのとき、女性は麝香入りのシャーベットをすすめ、男性の前に豪勢なお菓子を置きました。

そして、これらの品を食べながら、世間話をつづけたのです。

このように宴会や入浴など、『千一夜物語』には官能的な場面がよく登場します。


アラブ人に一番人気ともいえる香りがムスクです。

本物のムスクは、ジャコウジカの分泌物から抽出されますが、ジャコウジカは希少動物でもあり、現在は天然モノを手に入れるのはほとんど不可能です。

代用品としてよく使われているのが、アンブレット・ムスクシード。

乳白色の四角形の人工ムスクは、モロッコのスーク(市場)でも販売していました。
2年前(2010年)にモロッコで購入した親指ほどの大きさのムスクは、いまでも強く甘い香りを放っています。

アラブの人たちは、女性も男性も、この固形のムスクをそのまま身体や洋服にこすりつけるのです。
アルジェリア南部では、ムスクとクローブに、パチョリやバラを練りあわせ、固形香水を作るそうです。

この香りの塊は、ネックレスやイヤリングなどのアクセサリーにして、つねに身に着けるとか。

ムスクは、アラブの日常の香りなのですね。

※Health & Beauty Review(講談社)のブログ「イスラム美容研究」で掲載された記事に加筆しました。

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