イスラム庭園6:アルハンブラ宮殿(グラナダ)

アラビアンナイトの幻想の庭園は、アルハンブラ宮殿に実存している。

イベリア半島を支配していたモロッコ王朝は、キリスト教徒との戦いに敗れ、領土の大部分を失ってしまう。
アンダルシアに唯一残ったイスラム王国は、ナスル朝だった。
その首都グラナダには、各地で追放された学者、詩人、哲学者らが集まり、洗練された文化が発達する。
ヒスパノ・モレスク美術の洗練された建築と装飾は、アルハンブラ宮殿に集約されている。

宮殿は、2つの有名な中庭を中心に、部屋が積み木のように並び、まるで迷路のような構造だ。
部屋と部屋が中庭でつながっていて、どの位置からも草木が目に入る。
ここに住む人々が、いかに庭園と親密な関係だったかということがよくわかる。

宮殿に入ると、中庭に面したメスアールの部屋、そして黄金の部屋へと続いている。
祈祷室では、麗しいアーチ型の窓が外の美景と調和し、まるで一枚の絵のようだ。
イスラム建築にとって、自然は重要な要素になっているのだ。

右に進むと、回廊に囲まれたアラヤネスの中庭がある。
銀梅花(アラヤネス)を縁取った噴水が、この中庭の名の由来。
池に回廊の繊細な装飾の映りこみ、とても印象的だ。

もう一つの獅子の中庭は、2本の園路で4分割したシンプルなデザイン。
シュロを模した124本の細い大理石の柱を巡らせてあり、見る位置で中庭の情景は微妙に変化する。

さらに、リンダハラの望楼からも、窓越しにパティオを見下ろすことができる。
糸杉の中庭と呼ばれるラジャの中庭、ダラクサの中庭と、まだまだ続く。

階段式に造られた庭園パルタルの庭は、豊かな水が流れ落ち、強い日差しの中で、涼しげな空間を演出している。

さらに、ヘネラリフェ宮殿への道は、樹木の茂みの間に、バラやマーガレットが咲き乱れ、まるで夢の世界だ。
サラサラと流れる水音が、せわしない現代人に安らぎを与えてくれる。
マイナスイオン効果を、昔の人も知っていたかのようだ。

また、上品で可憐なアセキアの中庭は、全長50メートルにおよぶ細い池の両端に噴水があり、そこからアーチ型に細い水が吹き出している。

バランスがとれているのに、作為的なところがどこにもない。
デザインしたのではなく、本能と直感から生まれた形。ヨーロッパの合理的な優雅さとは違い、イスラム庭園からは、人間臭さが伝わってくる。

ナスル朝は、1492年1月2日、ついに崩壊し、モロッコ王朝によるイベリア半島支配は幕を閉じる。
究極の傑作アルハンブラ宮殿を永遠に残して…。